「まだまだ生き続ける」:『ローリング☆ガールズ』5周年に寄せて

今日で『ローリング☆ガールズ』本放送から5周年。
おめでとうございます。

思い返すと出会ってから今に至るまで、ボクにとってこうも不思議なほど「不思議」に溢れた作品はほとんどない気がします。
本作を最初に知った経緯からして、(合同誌の後書きでも触れましたが)C87の企業ブースで告知を見て「これ面白そう!」と思いつつグッズを手に取った、なんて奇縁で。
実際に本編が始まってみれば1話から「何だこれ!?」と目を丸くしつつ、気づくと食い入るように毎週の放送を楽しみにしていて。
物語が大詰めに入った頃にはいつの間にかゆるゆるとファン同士の繋がりに紛れ込み、その中では放送後も時々思い出したように話が湧き上がってきたり。
公式側でもTwitterアカウントにおける毎月の「ガンバレ!」ツイート、またドラマCDやスピンオフ小説本など、今尚途絶えない動きがあり。

そして昨年末の合同誌に続いて今もまた筆を取り、つらつらと文章をしたためている。
こんな作品、ボク個人の中ではそうそうありません。
しかも原作なしのオリジナルで、本編自体はたった1クールできっかり終わったアニメが、そのカテゴリに入っているんです。

今回はそんな本作『ローリング☆ガールズ』について、C97に関連する話を中心に一筆させていただこうかと。

#3 英雄にあこがれて

さて、東京編を題材にSSを書いたということで、意識的に見返しまくった回の思い出話から。

『STONES』のアレンジである印象的な劇伴『ローリングガールズ』が2話ラストでかかり、いざ旅が始まった……ら始まったで間柄のぎこちなさが見え隠れする4人。
いくらまとまらないモブであるとしても間接的にはちゃんと関わったトラブルを解決するんじゃないかと初めは思っていたっけ……
(相当見続けていたおかげで初期の印象が薄れた顔)

そんな中でも強く感じるのは、千綾の口数がまだ少なめなところ。
成長物語の意味合いではやはり一番伸び幅が大きかったのが彼女だと思っているんですが、それを考慮してもスッゴいたどたどしい。
後半になればなるほど、どれだけ閉鎖的な環境で育ってきたかが窺えるポイントでもあります。

加えて、合同誌のSSを書く段になってから感じ始めたのは、鈴本のり子が双塔の騎士団団長として本部の謁見の間に立つイメージがあまり湧かなかった点。モブとモサの距離感って序盤では再三強調されますが、実力について評判の知れ渡っているアキと一団員でしかなかったのり子とでは、その例に漏れず全くもって立ち位置に差がありすぎて、あんな堂々たる謁見の間になかなかハマらないことハマらないこと。
「何だそれ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、物語を書く人間には結構そういうビジョンが出来るかどうかが重要になってくるタイプもいたりして。
言うほどしんどかったワケでもなく、今となってはただの笑い話ですけど。

#4 夢

同じく東京編ということで、意識的に見返しまくった回。

羽原アキの抱えたトラブルの解決に一行が掠りもしないのは一周回って清々しい。と同時に、前話から続く4人のぎこちなさ同様、作劇上のリアルがとことん突き詰められている意味でも好きです。
それでもアキが “ドロム・バーサーカー” に関するゴタゴタを経て奮起し、爆弾事件をリックごと一刀両断する姿は只管カッコよくて……
ボクはこのシークエンスに圧倒されて鳥肌が立ち、ロリガを最後まで見届ける決心がガッチガチに固まりました。
また、ここでも劇伴『コミマ雲』が印象的。3話を見返した時「こっちでもかかってたんだっけ」となってしまったほどこちらの記憶が強まっていたり。

一方で合同誌のSS本文でものり子がさらっと触れていますが、とりわけ初見時、終盤の “罰” に対して作中視点での疑問をもったのも事実。
既に騎士団の団長が表立って活動する必要もほとんどなくなるほどには安定したコミマを背景とし、当の団長ポストを引き継いだのり子が、この時点では「人の潜在能力を極限まで高める効果がある」とされていた石まで譲り受けて「それで罰になるのか……?」と微妙に首を傾げていたのがぼんやりと頭の片隅にありました。
石の効果に関しては不実だと後に否定されたのも周知の事実ですが、あのSSの起点になった理由の1つは、まさにそんな当初の疑問をきちんと整理したかったため。
東京大決戦の舞台で繰り広げられたエピソードであり、作中における当時の東京にもきちんと触れられているゆえ、ロリガ世界の核心に本編で最も近い一編なのを踏まえ、節目を前にしてボクが何か書くなら掘り下げるのはここだろうと思えたのでした。

『不死身のエレキマン』

そんな経緯で題材が決まってから、用語集に並ぶほど頻繁に開いた文献は本作。
結季奈が主人公であるため東京編の人物はさほど登場割合が高いワケでもありませんが、前述の “核心” について更に掘り下げられているのもあり、アニメの東京編と共にしょっちゅう参照していました。

しかし改めて読んでみても、モブがモブたる由縁をここまで一貫して描いているエピソードは他にないな、と痛感するばかりで。
本編では必ずしも否定的に描かれていなかった、モブの別の側面が注ぎ込まれているだけにジワジワ響いてくる感覚。
『ヒャクレンジャー』の感想をTwitterで投下した際に「今までのスピンオフってセンチメンタルになりながら読んでいた」と書きましたが、これはその時の影響がまだ残っていた面も若干あったりします。

『歩く花』

ともあれ、構想ができてからは(かかった時間はさておき)さほど苦しみもせず執筆できた寄稿SS。

少し話が逸れますが、ロリガ合同以前に参加していた2つの同人アンソロでは、構想が出来てきちんと執筆できる目処が立ってから参加表明していました。
それが今回は「5周年記念の合同か、これは自分もやるっきゃないな」と勢い任せに参加表明してしまい、実は内心ひやひや
登場人物が動き出すまでは創作が進まず、2次創作に至ってはそこに考察の成立が合わせて必要となってくるボク個人の中では、だいぶ綱渡り感のある制作でした。

とは言え蓋を開けてみれば、本文完成後「せっかくだしタイトルも凝りたいなー……あ、ちょうどブルーハーツの曲でピッタリハマるのあったような、どの曲だっけな」なんて余裕をこいてたのも事実ですが。
(おかげで最終確認までいくつか修正点が持ち越しになっていました。主催の葉月さんには大変申し訳ないことをしてしまった……)

あんまり自分の作品の中身に関する話はできないし、スタンス上しないようにしてもいるため、幾分あっさり気味にしか触れられていませんが、満足感や反省もかなりあります。
一度はもう2次創作できない作品にカテゴライズされたかな……と思ったのが、ロリガはまたこうしてSSを書けたので、こういった機会が三たびあればもっと文章としても物語としても有意義なSSを書きたいもんです。

終わりに

そういえば合同のSSは、ロリガの世界構造に関してボクなりにもっと切り込みたかったかな……みたいな意図もあった気がして(書いてるうちに登場人物の動きばっかりに目が行きすぎるとそういう当初の目論見を見失いがちだったりするんですが)。
その辺りの意図を元を辿ると、以前こんなTogetterまとめを見たのも『歩く花』を書いた一因になっているかもしれません。改めて見てもすげえ考察だ。
こういう、普段2次創作をやってるジャンルのノリに似た匂いがある文章を(学が足りないなりに)好んで読んだりするのもあって……何だかボクのSSが浮いてるんじゃないか、みたいな感覚にちょっと襲われたりもしたんだよなあ……
まあ、それくらいは別に良いんですけど。創作物まで簡単にその空間へ馴染んでたらボクじゃないもんな。

ここまで膨大な見識に裏打ちされた視点は流石に無理ですが、スピンオフをただ味わうだけでなく改めて読み込んでいくのも一興になるでしょうね。
そして「ロリガはまだまだ生き続ける」。転がっていくその道筋が今後はどうなるか、これからも楽しみです。

Written on January 10, 2020